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 古きよき日のゲームセンターがポケットモンスターを生んだ。のだろうか。
そうなんだと思いますし、そうではないとも思うのです。 かつて、ファミコンの名人はこういいました。「遊びはファミコンしかしらない、寂しい大人にならないでください」今、世の小中高生にこんな言葉を投げかけたら、追い込みかけられますよね。少なくともネットのうえでは生きてはいけなくなるところでしょう。その言葉を放った名人は、26歳だったそうです。もっとオジサンに見えたのは、私が幼かったからでしょうか。いや、今確認しても、同世代の友人にこんな風格のある奴ァいねえな。ああ、そうそう、ポケットモンスターはゲームが好きだった田尻智氏が生み出した作品の中でも突出した傑作となりましたが、では、ゲームが好きなら面白いゲームがつくれるかといえば、必ずしもそうではないはずなんです。本を読むのが好きなのと、作るのが好きなのは違いますし、作るのが好きでも上手く作れるかどうかは別のところにあるわけです。

 私論になりますが、完成度の高いゲームは、ゲームの枠を超えた面白さがある。小説や映画、演劇といったものにはじまり、最近では銃器や車、それらゲーム外のものに対する、圧倒的な情熱と知識欲が根底にあって、それをゲームという入れ物の中に適当に収まるようにつくる。上手く収めるとそこに「ゲームらしさ」が出てくる。という寸法です。下手なクリエイターが映画をゲームにねじ込むと、ムービーばかりのLDゲーム(昔はレーザーディスクでゲームができたのです) のような、粗末な作品に仕上がってしまう。 また、ゲームだけしか趣味がない人間がつくったゲームは、ゲームの箱に収まった情報からしか発想を得られないために、目新しさがまるでないものになってしまう。今のゲームがつまらないのは、情熱と知識の不足によるものなのかもしれません。それを安易なオンラインやランキング、課金システムで補いだしてしまっている。


 とまあ、批判は簡単なんですけどね。いざやるとなると難しいということはわかります。ですが、ゲームだけやっていて新しいものが創れるかといえば、それは難しいし、挑戦しなければ新しいものは生まれてこないわけで、ナンバリングタイトルが二桁になっても平気な今の業界は健康な状態ではないよと。田尻氏は、ゲームに打ち込んだ方ですが、幼少期には虫取り、ザリガニ釣りといった遊びも体験していますし、そういった遊びの感覚がしっかりあったうえで、ゲームをつくられている。だから、ゲームの限界や基本を超えた、斬新な作品ができるわけですね。月並みですが、外で遊べということですか。


 ポケモンを生み出し、ヨッシーのたまご、クインティ、パルスマンを生み出した田尻氏の過去、ゲームフリークの過去が垣間見える本作。色々と想いを巡らせる機会が多い一冊でした。




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