サッカーボール
地域密着。いい響きですね。地元のチームを応援するファンの方も多いでしょう。
地域密着は本当にいい。なんせ、そこに生まれたこと以外誇ることが何もない人
ほどのめり込むのですから。つまるところ、郷土という軸足を失ってしまっては
生きていくことができない人の弱点を責め立てて、効率的に金をしぼりとれる最
高の呪文なわけです。こりゃたまらんでしょうな。

その地域に生まれたことなんて、何の自慢にもならない。これが根本的にわから
ない。日本に生まれたから偉く、アメリカに生まれたからバカ。そんな世界の話。
差別を前提にしたお国自慢で競争心理を煽り、金儲けの道具にする最低の商法だ
と私は思っています。よく考えてみてください。国家から市区町村にいたるまで、
人間が勝手に区割りをしただけのことです。それがなぜ、人間性の優劣になるの
かと。

地域密着という以上、その地域出身の選手だけが出るのかと思えば、そうではな
い。よそから連れてきた人間を使って、どこより強いのどうのという。実に愚か
しいことです。仮にその地域のチームが強いという事実が「偉い」として、何で
選手でもなんでもないアンタが「偉そう」なんだといわれたらどうなのか。血が
通っていないとか、郷土愛が理解できないとか、そういう批判をさんざ受けてき
ましたが、私の考えはまったく変わりません。地域性を売りにするスポーツは、
弱い人の心を最も効率的につかむ商売なのです。

かつて、日本サッカー界に緑色した強豪チームがありました。サッカー界のビッ
グクラブを、全国で圧倒的人気のクラブを作ろう。そのためなら金に糸目はつけ
ないし、手段は選ばない。徹底した金満と最高の環境、目を覆うほどのメディア
の後押し…。こうしてスター選手だらけとなったそのチームは、サッカー界の巨
人となることを求めました。しかし、特定のチームだけが強くなることを嫌い、
地域密着のスモールビジネスを展開することを掲げていた胴元に拒否され、つい
にサッカー界の巨人になれず、今や見る影もなくなってしまいました。

結果としてスモールビジネス、地域密着という形は守られました。しかし、新し
いスポーツの目覚めと、新しい価値観の誕生は阻止されてしまった。その新しい
価値観とは、欧米クラブのような莫大な「給料」の容認です。メジャーリーグ然
り、プロスポーツ選手は途方もない金額を稼ぎ出します。それをよしとしない文
化が野球にはあった。だからこそ、新しいスポーツのサッカーはそうはならない。
ビッグクラブを認め、海外からも有名な選手が高額年俸のもとに集い、アジアの
サッカーといえば日本となるんだと、私自身思っていたものです。海外代表経験
選手が日本の新興リーグにきてくれていましたからね。

しかし、そうはなりませんでした。プロ選手は一般的なサラリーマンとは違いま
す。「シュートを一本決めたからいくら」「ホームランを一本打ったからいくら」
「何時間拘束されたからいくら」という給与体系で仕事をしているのではありま
せん。彼らは、集めたファンの数、そして売れたグッズの数、親会社への貢献度
で給料をもらっているのです。10億円分の仕事をしたなら、10億円をもらう権利
がある。ただ、こんな簡単なことが日本人には理解できないのです。自分がそん
な莫大な給料をもらうことがないからなのでしょう。「ズル」だと感じるわけで
すね。自分が1000万円分の仕事をしたのに、100万円しかもらえなければ怒りま
せんか。怒らないのであれば、プロを非難し、金満チームを蔑めばよろしい。罵
詈雑言を投げつけるほどに、選手は海外を目指し、地域密着のつまらないスポー
ツ団体だらけになるだけですから。

ビッグクラブは必要です。必要悪などという人もいますが、金を払わない方が明
らかに悪です。日本人の多く、つまり、その地域に生まれたこと以外に誇るべき
ものを持たない人たちは、誰もが皆、自分と同じくらいの生活、境遇であるべき
だと信じているもので、そういった人の足を引っ張ることが生き甲斐の人間たち
がブラック企業をのさばらせる。奉仕を強要するわけです。日本のスポーツシー
ンのみならず、この考え方を捨てない限り日本は世界一にはなれません。

日本人は弱い者が強い者を倒すのが大好きです。そのためか、強いもの、大きい
ものは事情を聞くまでもなく悪だと決めつける。この思考停止が、日本の発展と
個人の幸せを阻害しているように思えてならないのです。

日本、そして我々が今後幸せになるためには、このムラ社会的な差別思想を捨て
る必要があるのではないでしょうか。
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