アンバサダーマーケティング(ロブ・フュジェッタ)
【要約】
「ゴチャゴチャぬかすヤツは客じゃねェ。とっととくたばれトンチキ野郎!」



 アンバサダーマーケティングは、「アンバサダー」日本語でいうところの大使。アンバサダーといえばその昔、真っ赤な両軸リールでアブの愛称で知られ、一部のインドアフィッシャーマンたちがこよなく愛した開高健が…などと脱線しかねないのでこのあたりにしておきますが、つまるところあなたの代わりにその商品を勧めてくれる人を活用して儲けよう!というのが本書の主題となります。

 原著はブランドアドボケーツであって、翻訳すればブランドを擁護する人となります。つまり、自社のブランドを無条件に誉め、他社を貶め、批判する輩を責めて責めて責めまくる、一部の狂信者の力を借りて儲けよう!ということになるのですが、どういうわけかトーンダウンさせて翻訳しているあたり、日本には合わない等々考えて、色々やりやがったな?と勘ぐってしまったり。

 私もかつては(今でもそうですが)良心的レビューの信奉者でした。いい物はいいと伝え、悪い物は悪いと伝える。一部の企業がレビューを操作する部署や人員を配したり、都合の悪いレビューを消すといった姑息極まる手段を講じたり、そんな人たちに触発された狂信的ファンに殺害を予告されても、真摯にレビューをしていれば、いつかは受け入れてもらえると信じていたのです。

 こう書くわけですから、当然に現実はまったく異なっていたわけです。人々は公平公正なレビューより、自分の好きな物を無条件に誉め、嫌いな物はどんな些細な欠点も見逃さず、欠点がなければウソをついてでも産み出して、他社や製品を叩くことで日ごろの溜飲を下げる。そうすることで商品が売れたり、アクセスが増えたり、更なる狂信的ファンの獲得が可能となったりと、悪貨が良貨を駆逐するかのように、真面目に取り組む人が日陰者になる時代がやってきてしまいました。

 皆さんは「カラス」を見たことがないとしましょう。私がカラスは黒だといったとして、他の九九人がカラスは白だといえばどうなるでしょうか。皆さんはカラスは白いのだと思うはずです。ネットのレビューサイトや様々な場所でこういった行為が繰り返され、企業の尖兵となって批判者を駆逐したり、批判的な内容を薄める(低評価を高評価に埋もれさせる)専門の業者まで現れる時代。なんとも悲しい気分になります。

 本書はこのような人生を棒に振るレベルで自社製品を応援する人を産み出し、評価しないユーザーを無視ないしはこれから顧客になりそうな人の視界から消すことを推奨します。アンバサダーマーケティングを実践するならば、日経BPさんもこんな書評は是非に消してしまいたいところでしょう。商売の上では間違いなくただしいことで、そうしない会社は今後どんどん割を食うことになります。ただ、どうしても納得できない部分もあるわけです。この劇薬を手にするかどうかはあなた次第です。しかし、飲まねば緩やかな死が待っているだけ。良心の呵責を持つ者から消されていく。正義とは何だったのか?人とは何か?など、何やら余計なことを色々と考えさせられてしまうビジネス書でした。

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