なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか
 不動産屋は極悪非道のヤのつく仕事?暴利を貪り夜ごと銀座へ繰り出す拝金主義者?いえいえ、そんなのはごく少数。あなたの周りにもきっとあるはず。探さなければ目にも留まらない、うらぶれた町の中にひっそりとたたずむ不動産屋が。

 彼らはどうして生き残っているのでしょうか。地方の企業といえば、早朝からせっせと働き、夜遅くまで家内制手工業よろしくコマネズミのようにやりくりするのが当然の世界。にも関わらず、不動産屋のオヤジというのは重役出勤をしてきて、「おはよーう」などと呑気な声をあげたきり、新聞を読むでもなく眺め、テレビをつけては阪神が勝っただの、巨人が負けただのいっている。中には毎日のようにボランティア活動に出掛けたり、裁判の調停員や非行少年の更生に尽力したりしている人もいる。

「こいつ、働いてないぞ…」
 みなさんの抱く感想は間違いなくコレ。だのに不動産屋は潰れるでもなく、消えるでもなくそこにある。バブルのときに悪どい儲け方をしたのだろう。そんな風にいわれることもしばしばですが、見ればここニ〇年どころのたたずまいではない。一体何が彼らを食わしているのか。

 本書ではその秘密が明かされます。といいますか、私自身不動産業もやっておりますので、明かせといわれれば明かせてしまうんですけどね。私は現在二〇代。バブルのころはハナタレガキで、いかにしてスト2(ゲームセンターで一世を風靡したゲーム)で勝つかを考えていた時期です。はい。当然そのころ不動産業などやっておりません。それでも食っております。バブルで一山当てたわけではありません。どうやって食っているかの謎が更に深まりましたね!

 答えは簡単。繋がりです。町に根付き、地主さんと良好な関係をつくり、大家さんに信頼されるような仕事をし、建設会社がきたときはとっておきの住宅用土地を紹介する。派手さはなく、つつましやかにやってきただけのことです。にも関わらず、世間様は極悪非道の暴利貪り怪獣のようにいいます。いわれるからこそ、より一層、慎ましやかにやっていくわけです。暴利を貪ったりした日には、小さな町ですからすぐさま噂は広がります。不動産屋への心象は何もしていなくとも最悪ですから、それはそれは尾ひれはひれがつくものです。

 いびつな光を放つネックレスなんてつけません。嫌味ったらしい金時計なんてしていません。見るからに悪そうなダブルのスーツも、グッチやプラダのセカンドバッグも、葉巻もベンツも何も持っていません。汚れの目立たない作業着を着て、契約用の書面をつくり、現場を案内し、保守点検をするだけです。衣食住の住の部分を担当する、泥臭い仕事なのです。地上げだの土地ころがしだのの業者はバブル後に売り抜け損ねてほとんど消えてしまいましたし、スーパービッグなマンションをバカスカ建てる業者も景気の悪化で消え失せました。何の華もない、日陰者の拾い仕事を毎日コツコツしているからこそ、汚い看板とやる気のなさそうな受付と暇そうなオヤジでまわっていくのです。そんな仕事だからこそ、皆さんの目にも留まらないわけですね。

 悪の権化や暇な仕事の代表のようの思われる不動産屋の実態と彼らの堅実な生き方が知れる一冊です。

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